ディズニー データベース 別館

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【連載】幻のねずみ #49『10年目の夢と目覚め ver2』

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※この物語は事実をモチーフにしたフィクションです。


時は少し遡って、1964年8月27日。

メリー・ポピンズ』のプレミアが始まる数時間前、私の到着を待つウォルトは不思議な手紙を受け取っていた。

「親愛なるウォルト・ディズニー様。我々の手違いであなたのもとへお送りした動物を回収しに参りました。本来、あなたのそばにいるはずだった者を代わりにお届けします。」

ウォルトはそれを見て私に危機が迫っていることを知り、慌てて外へ飛び出した。

ロイはプレミアの時間前に突然出かけようとしたウォルトに理由を尋ねたが、彼は急いでおり「話は車の中で」と答えた。

車を走らせるウォルトはロイに「どうしても行かなくてはならないところがある」と言ってはっきり話そうとせず、ロイも「言わなくていい」と答えた。

しかし、目的地についても私の姿が見えなかったウォルトは慌てて運転席に戻り、ロイに私のことを話してしまった。

ロイは「なぜ私にその話をしてしまったんだい…?」と悲しそうに言った。

次の瞬間、運転席には誰もいなくなっており、キラキラと光る星の残像が残っているだけだった。



1965年7月17日。

夢と魔法の王国ディズニーランドは開園10周年を迎えた。

人々はディズニーの作り出した世界の中に入り込み、その精巧さを全身で感じることができる。

アトラクションはテーマランドやディズニー映画の世界観を実際に体験して回ることができ、レストランではその土地の雰囲気や味を体験することができた。

ショップでもお土産を買う人々が列を成している。

ディズニーランドはエンターテイメントでも人々を楽しませ、ショーやパレードはゲストの人気を集めていた。



入園したゲストを迎えるメインストリートUSAは古き良き時代の通りを模したショッピング街となっている。

ディズニーランドの中央にはハブがあり、そこから各方向に進んでいくとそれぞれのテーマランドの光景が広がっている。

アドベンチャーランドは自然と冒険の国で、熱帯のジャングルを船で進む『ジャングルクルーズ』が名物となっている。

フロンティアランドには広々としたアメリカ河が広がっており、散策型施設のトムソーヤ島や立派な蒸気船のマークトウェイン号が航行している。

西部開拓時代の街並みは、さながら開園当時に放映していたデイビー・クロケットの物語を思わせる世界だ。

トゥモローランドには人類の夢である未来や宇宙をコンセプトにしたコンテンツが揃っており、ゴーカートの『オートピア』や、ディズニーランドが誇るモノレール、映画『海底2万マイル』の展示などがある。

ファンタジーランドではディズニーの映画に登場した世界やキャラクターをモチーフにしたアトラクションが並んでおり、ゲストは『ピーター・パン』、『白雪姫』、『ふしぎの国のアリス』、『たのしい川べ』など、お気に入りの作品の世界に飛び込むことができる。

ハブの奥に立派にそびえる眠れる森の美女の城もすっかりディズニーランドのランドマークとして貫禄のある姿を見せていた。

オープン当時はまだ公開されていなかった映画『眠れる森の美女』も、今では立派にディズニーの名作の一つに数えられている。

そして…。

私にとって一番思い入れのある、ミッキーと仲間たちが暮らす町がどこかにある。



私がこの記念すべき日にディズニーランドにやってきたのは、とある一人の男に会いに来たからである。

彼こそがこのディズニーランド、もといディズニーという企業を育ててきた張本人と言うべき人物である。

彼の活躍がなければ、今のディズニーの映画やテレビ番組、テーマパーク、音楽、コミック、その他あらゆる要素は存在しなかったと言っても過言ではない。

彼は園内を行き交う人々の姿を、嬉しそうに眺めていた。

私は後ろからそっと近づいた。

声を掛けたいが、一歩間違えればルール違反だ。

自分は星になって消えてしまうかもしれない。

でもここでたじろいでいては前に進むことはできない。

私は意を決して彼に声を掛けた。

「やぁ、ロイ」

ロイは振り向きながら答えた。

「ようやく来たんだね。待ってたよ。」

イマジナリー・フレンドがオーナー以外の人間と話すのはルール違反で、ルールを破れば星になってしまうはずだが、私がロイに話しかけても違反とはならなかった。

それどころか、ロイは私のことを待っていたと語った。

彼は何を知っているのだろうか。


<つづく>


登場人物

◆マウス
物語の語り手。
ウォルトとだけ話すことができるネズミのイマジナリー・フレンド。

ウォルト・ディズニー
マウスのオーナーで、彼と話せる。
マウスの存在をロイに話してしまい、ペナルティとして消滅した。

◆ロイ・ディズニー
ウォルト・ディズニーの8歳年上の兄。
ウォルトが消滅する瞬間に立ち会っていた人物。


史実への招待

イッツ・ア・スモールワールド』はユニセフの依頼でニューヨーク万国博覧会に初お披露目されました。

厳しい納期の中、精鋭のスタッフ達が集結して作りあげた子供だけの世界は一躍万博の超人気アトラクションとなりました。

利用料は大人95セント、子供60セントだったのですが、総利用者数は2年半で1,000万人という驚異的な数字となりました。

売上は全額ユニセフに寄付されたため、少なくとも600万ドルがこのアトラクションから寄付されたことになるようです。

また、このアトラクションは時間あたりの回転率が極めて高かったため、『カリブの海賊』もボートライドになったとと言われています。

ウォルトの強い希望で、コンセプト・アートは既に退社していた『ふしぎの国のアリス』のメアリー・ブレアに依頼しました。

服飾デザインはマーク・デイヴィスの妻アリスが担当しました。

2008年の香港版以降は、一部パークでディズニーキャラクターが登場するリニューアルが施され、安定した人気を博しています。