ディズニー データベース 別館

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『シンデレラ (2015)』地上波トリビア:リミックス

ウォルト・ディズニーはディズニー映画の一番好きなシーンに『シンデレラ』(1950年)のシンデレラの魔法のドレスアップシーンを挙げていました。


2015年、そんなアニメ映画版『シンデレラ』をベースにした実写版が65年の歳月を経て劇場公開されました。本日、4度目の地上波放送が行われます。


今回は2020年4月22日にTwitter投稿した地上波トリビア『シンデレラ』を読み物として再構成した記事となります。作品のネタバレを含む可能性があるのでご注意ください。

それまでのシンデレラ

2023年、ディズニーは創立100周年を迎えました。つまり1923年にディズニー社が設立されたわけですが、それよりも前にウォルトはラフォグラム社というサイレント・アニメの会社を1921年から1923年まで経営していました。そのラインナップの中に『シンデレラ』があり、Blu-rayの特典映像にも収録されています。



これがディズニーの『シンデレラ』の原点だ…!


それから約30年後、紆余曲折を経て長編アニメーション映画『シンデレラ』(1950年)が公開されました。最初は1930年代にシリー・シンフォニー(音楽とアニメーションの融合に焦点を当てた短編シリーズ)として企画するも物語がまとまりきらず断念。その後も何度か企画が立ち上がるも、予算の都合などでなかなか実現に至らなかったのですが、第二次世界大戦も終わり負債を抱えたディズニーが一発逆転の一手として作り上げたこのシンデレラがスタジオの窮地を救うこととなったのです。本作がコケたら今のディズニーは無かったのではと言われていますが、当時ウォルトはスタジオ初の長編実写映画『宝島』の撮影でイギリスに向かっており、撮影機材に夢中でシンデレラ製作班からの報告には締切が近づくまで全然返事をよこさなかったのだとか…。ようやく返事をくれたと思ったらラストシーンの大幅変更を要求するなど、アニメーターたちからしたらたまったものではないと思いますが、それでも的確な指示でヒットに繋いだのがなんともウォルトらしいとも言えます。



1997年にはディズニーのテレビ番組内で、実写のテレビ映画『シンデレラ』が放送されました。この作品はディズニー制作というよりかは、ロジャースとハマースタインによるミュージカル版(オリジナルの役者は『メリー・ポピンズ』のジュリー・アンドリュース)をテレビ向けにリメイクしたものです。様々な人種の役者が採用されているのが特徴です。シンデレラ役のブランディ(ブランディ・ノーウッド)は後にディズニープリンセスのテーマソングを担当。さらには現在製作中の『ディセンダント』の最新作にシンデレラ役でカムバックを果たすというニュースまで入ってきています。本作はディズニープラスでは『ロジャース&ハマースタイン:シンデレラ』というタイトルで視聴可能です。



妖精役はホイットニー・ヒューストン


他にも、テレビドラマ『ワンス・アポン・ア・タイム』や映画『イントゥ・ザ・ウッズ』(演:アナ・ケンドリック)など、シンデレラは実写化の機会に恵まれているほうだと言えるでしょう。

2015年版のシンデレラ


3D映画人気の流れも相まって興行的に成功を収めた『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)をきっかけに、『シンデレラ』も実写映画化されることが決まりました。原作の物語のその後を描いた『アリス』に対し、『シンデレラ』は1950年のアニメ版をベースに実写リメイクという形で物語が再構成されました。



「私はマジックだ」


監督はケネス・ブラナー。『ハリー・ポッターと秘密の部屋』のギルデロイ・ロックハート先生のイメージも強い彼ですが、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身の確かな演技力だけでなく、『フランケンシュタイン』『マイティ・ソー』など監督としての実績も多数です。最近では『TENET』や『オッペンハイマー』にも出演しています。



シンデレラを演じたのはリリー・ジェームズ。本作以前には『ダウントン・アビー』のシーズン4~6にレギュラーとして出演していました。トレメイン夫人はケイト・ブランシェット、フェアリー・ゴッドマザーはヘレナ・ボナム=カーターが演じています。大幅なキャラ変更がなされた大公役はステラン・スカルスガルド。国王役はブラナーが俳優を志すきっかけとなったデレク・ジャコビ。シンデレラの実の母親はヘイリー・アトウェルが演じています。

受け継がれる音楽

1950年のアニメ版で、ウォルトはディズニーお抱えのベテラン作曲家にスコア(BGM)を任せましたが、歌曲については新しい風を採り入れたいと考え、ティン・パン・アレーの音楽家たちなオファーをしました。ティン・パン・アレーとは、19世紀末に出現した音楽出版社が並ぶニューヨーク28丁目一帯の通りの通称(意味はブリキの鍋の音がする横丁)であり、ポピュラー音楽の作曲家が集まっている場所でした。


ティン・パン・アレー東京ディズニーシーアメリカンウォーターフロントにあるニューヨークを再現したエリアにも存在します。公式ブログの解説記事もありますので、こちらも併せてどうぞ。


【公式】ようこそ!ティンパンアリー(Tin Pan Alley)へ|東京ディズニーリゾート・ブログ | 東京ディズニーリゾート


さて、2015年の実写版はミュージカル映画ではありませんが、いくつかクラシック時代の楽曲が採用されています。

ラベンダーは青い

まずシンデレラとお母さんを繋ぐ歌で、映画の終盤にも大事な役割を果たす「ラベンダーは青い」(ラベンダーズ・ブルー)。元々はイギリスに17世紀から伝わる子守唄で、1849年にシェイクスピア学者のジェームズ・ハリウェルが書いたバージョンがメジャーとなっているのですが、1948年にディズニー映画『わが心にかくも愛しき』でラリー・モーリーとエリオット・ダニエルが曲を付けた劇中歌が英語圏のスタンダード・ナンバーとなりました。本作でも『わが心にかくも愛しき』のバージョンがベースとなっています。

スウィート・ナイチンゲール


続いて、1950年のアニメ版で義姉のアナスタシアとドリゼラが練習していた曲「スウィート・ナイチンゲール」。前半はドリゼラ(歌が堪能な藤田淑子さんがドリゼラらしく音痴に歌ってらっしゃいます。なんと贅沢な…)、後半はシンデレラのソロ歌唱でした。ギター奏者で発明家のレス・ポールが試みて主流になりつつあった多重録音という新技術を導入した楽曲で、デモを聴いたウォルトが「シンデレラとたくさんの泡に映ったシンデレラたちのハモりをつけよう」と提案しました。


2015年の実写版ではシンデレラが動物にエサをあげに行く場面で軽く流れる程度となっています。代わりにドリゼラが練習しているのはシェイクスピアの喜劇『お気に召すまま』の「It Was a Lover and His Lass」に変更されています。

ビビディ・バビディ・ブー

妖精のフェアリー・ゴッドマザーがシンデレラのために魔法の呪文を唱える時の歌で、アニメ版『シンデレラ』の代名詞とも言える楽曲です。これは前述のティン・パン・アレーの作曲家が作った歌「Chi Baba Chi Baba (My Bambino Go to Sleep)」に感銘を受けたウォルトがその本人たちにお願いして作ってもらった呪文ソングとなっています。「Chi Baba」はアメリカの歌手ペリー・コモが歌った曲で、途中にイタリア語っぽい謎のフレーズが登場し、ここから「ビビディ・バビディ・ブー」のヒントが生まれました。後にペリー・コモは「ビビディ・バビディ・ブー」のカバーもしています。


実写版の劇中だとフェアリー・ゴッドマザーは歌いませんが、エンド・クレジットで彼女を演じるヘレナ・ボナム=カーターによってカバーされています。

夢はひそかに

アニメ版だと、シンデレラが起床時に夢について歌うこの曲、実写版ではエンド・クレジットでシンデレラ役のリリー・ジェームズがカバーしています。日本語版ではデュエットになっておりまして、これについては「日本語吹替版」の項にて後述。

シンデレラの名前

シンデレラは本名ではなく、義姉が名付けた「灰かぶり」という意味のからかい言葉で、かまどの消灰を意味するCinderとEllaを合わせてCinder-Ellaと呼ばれています。実写版では本名をEllaとしており、「灰かぶりのエラ」=シンデレラということになっています。原作でも本名をエラとする版も存在するのですがこれは後付の設定であり、元々ellaは「~っ子」「~っ娘」のニュアンスがある接尾辞(指小辞)で、「灰かぶりっ子」=シンデレラというネーミングだったようです。

輝く衣装

実写版の衣装デザインは『恋におちたシェイクスピア』『アビエイター』『ヴィクトリア女王 世紀の愛』でアカデミー賞受賞歴のある衣装デザイナーのサンディ・パウエルが担当しています。



シンデレラの青のドレスにはスワロフスキーのクリスタルが約1万個も使用されています。ドレスの表面は上品で透過性のあるシルク生地で、内側の織物には光沢のあるグリッター素材が使用されています。シルクが美しく透けることでシンデレラの内面の美しさを表現しているとのこと。



フェアリー・ゴッドマザーが魔法をかけると彼女のドレスがカラフルに輝くのはCGではなく、ドレスに仕込まれたLEDライト。オランダの電子機器メーカー、フィリップス社が特注で制作した小型のLEDライトを点灯させるため、ドレスには20個の電池が取り付けられ、同社の社員が遠隔でライトの色を操作しました。



シンデレラに欠かせないアイテム、ガラスの靴も撮影用の小道具として用意されましたが、シンデレラ役のリリー・ジェームズの足に合わなかったため、実際にガラスの靴を履いているシーンはCGによる合成となっています。なお、アニメ版とは靴を割られる展開が異なるため、実写では脱げる靴が右足に変更されています。お見逃しなく。

ぶらんこ



夜の庭園で王子がシンデレラのブランコを押す構図はフラゴナールの名画『ぶらんこ』へのオマージュです。『アナと雪の女王』の「生まれてはじめて」でおなじみの絵画ですね。ブランコを漕ぐ場面は、1976年のユニバーサル映画版にも登場しています。1976年版の音楽は「小さな世界」や「くまのプーさん」でおなじみのシャーマン兄弟が担当しています。



生まれてはじめて

日本語吹替版

日本語版ではシンデレラ役を高畑充希さん、キット王子役を城田優さんが務めました。



城田さんは後にピクサーの『2分の1の魔法』でも準主役のバーリーの声を演じたことで話題になりました。



バーリー・ライトフット


高畑さんは2007年にディズニーのアニメ映画『ルイスと未来泥棒』のイメージソングに自身の2ndシングル「瞳ひらいて」が選ばれた縁で、ルイスのクラスメイトのリジー役を演じていました。当時は歌手活動の際の「みつき」名義での出演でした。



怖いよ。


日本語版エンドソング「夢はひそかに」は世界で唯一、シンデレラと王子を演じたキャスト(高畑充希城田優)によるデュエットとなりました。作詞を担当した麻衣さん(久石譲さんの娘さんで、4歳の時に『風の谷のナウシカ』で「ラン、ランララ、ランランラン」のあの歌声を披露しています)は映画公開の3年後に城田さんの兄である丹羽大さんとご結婚されています。

同時上映作品

『シンデレラ』の同時上映短編は『アナと雪の女王 エルサのサプライズ』でした。社会現象を巻き起こしたビッグタイトル『アナと雪の女王』(2013年)の続編となる最初の短編ということもあり注目度は十分でした。地上波放映にはあまり関係ありませんが、実写版『シンデレラ』のBlu-rayにも特典映像として収録されています。


2019年3月12日、『アナと雪の女王』の吹替版オラフ役の声優の不祥事により、オラフが登場するビデオソフトが一斉に販売停止となりました(報道後、即ソフィアのDVDをポチり、翌日ダッシュでジャッジアイズを買いに行きました)。その際、『アナと雪の女王 エルサのサプライズ』日本語版を収録していた『シンデレラ』のBlu-rayも巻き添えを食らう形となりました。


2019年5月25日に特典の『アナと雪の女王 エルサのサプライズ』を新録吹替音声に差し替えた『シンデレラ』のBlu-rayが再販されました。この空白の2ヶ月間は新品の『シンデレラ』が手に入りにくかったようです。



おたんじょお~び おめで~とお~