いきなりですが、「リスク管理」してますか?
パソコンのデータをいじる前にバックアップ取ってますか?
お店に行く前に公式サイトで定休日を確認してますか?
スイカを思いっきりかじる前に種があるかチェックしてますか?
回避の難しいリスクは数あれど、最低限のリスク検討は怠らないようにしたいものです。常に負け続けるディズニーの悪者たちはリスク管理をちゃんとできていたのでしょうか?
申し遅れました。私のような悪者コンサルの仕事をしていると、リスク管理がおろそかになっているクライアントの方、結構いらっしゃいます。本日はせっかくお越しいただいたのですから、無料体験のような形で見学していきませんか。実際に相談者の方が来ていますので、今回は彼女の悪事について改善点を検討していきたいと思います。
今回の相談者は『白雪姫』の王妃さんです。
悪事の前に用意したというプロジェクト計画書を提出していただきました。
ありがとうございます。達筆でいらっしゃいますね。さて、まず本プロジェクトの背景には「世界一の美女になりたい」と書いていただいています。大きな夢ですね。素敵です。王妃さんは既に世界で2番目だそうです。一番じゃないとダメなんでしょうか?二番じゃダメなんですか?
この書きっぷりだと、世界一が最終ゴールになってしまっていますね。これでも構わないのですが、世界一の美女になることで何を実現したいのかが言えるとよりゴールが明確になると思います。それによって手段も変わることはありますし、目的意識って大事ですよね。
で、本プロジェクトのゴールなんですが、「自分が一番になるために、一番である白雪姫を殺害する」ということですね。なるほど…。
天才か!
殺しともなるとリスク管理はとても重要です。中途半端なやり方だとすぐ逮捕されて裁判ですからね。おや、今回の相談者さんは女王でしたね。つまり、司法もへったくれもない、と……。
天才か!!
権力にものを言わせて徹底的にやってやる作戦ですね。で、その手段は?「手下の狩人が彼女を城から離れた花畑へ連れて行き、花を摘ませて油断させて刺殺」……と。
あれ、弱くない?
目的の所まではよかったんですがねぇ。さて、計画において不確定な要素はリスクになり得ます。今回のケースだと、実働の部分が狩人さんに任せきりになっています。狩人さんを高く買っているようですが、そこまでの実力および信頼関係があるのでしょうか?もしそこが怪しいのであれば、城から離れた花畑だと裏切られるリスクも上がります。その場合は、貴女の目の前でやらせたほうが良いと思います。
で、どうだったんです?狩人に裏切られた?あぁ、それは残念でしたね。で、諦めずに次の計画を立てたということですね。
なるほど。手段のみ書き換えていただいた形ですね。どれどれ。
まずは魔法の薬で醜い老婆に変身し……
おいおいおいおい。
魔法の薬で変身だなんて大丈夫ですか?元に戻れないと、本来の目的である世界一の美女を逃すことになりますよ。
今回の計画で使用する毒リンゴの効果が永遠の眠りというのも気になりますね。この呪いは愛する人のファースト・キスで解かれるとのことですが、そこまでは気が回らなかったのでしょうか。どうやら確認した上で、そんなことは起きるはずがないと思ったようですね…。なるほど……。それに死んだと勘違いしたこびとが彼女を生き埋めにするのを待つ、というのもナンセンスですね。なんせ相手は世界一の美女です。死んだと思ってもすぐに埋めたり焼いたりせずに大事にディスプレイしておくヤバい奴だって世の中にはいるんです。こびとがどうだったかはともかく……。
で、こちらは上手くいったのでしょうか?あ、毒リンゴを食べさせるところまではうまくいったのですね。それは結構。で、その後こびとたちに追いかけられ、崖から転落死してしまった…と。ご愁傷様です。その後、白雪姫がどうなったかは分からないわけですね。でも白雪姫が生きてようが死んでようが、死んでしまったあなたにとってはもはや関係の無いことですね。
お話を伺った範囲で反省ポイントを書き出してみましょうか。
【王妃様の反省ポイント】
狩人に白雪姫殺しを命じた
→良心に目覚めた狩人に裏切られました。殺人を厭わず、白雪姫に負の感情を持つ人をスカウトしましょう。
城から離れた花畑を殺害現場に指定した
→アリバイ作りが目的だったのかは分かりませんが、実際に結果を確認する「検証」のプロセスが決定的に欠けています。
醜い老婆に変身
→当初目的である世界一の美女になるに大きく反する行為です。大丈夫だとは思いますが、ちゃんと戻れるかの確認はしておきましょう。
毒リンゴで永遠の眠りにつかせる
→この呪いの条件を見るに、白雪姫に気になる人がいたかどうかの身辺調査は必須でした。
こびとが埋めるのを待つ
→直接手を下さないのが流行っているかもしれませんが、これも人任せが過ぎますね。
さて、王妃さんは結果の検証を疎かにする傾向があるようです。2回とも狩人やこびとにとどめを刺させる作戦を立てられています。魔法の鏡で結果を確認できるとはいえ、もし「失敗」となれば現地に赴く必要がありますからね。その点、ヌーを暴走させてお兄さんを殺した『ライオン・キング』のスカーさんはきちんと現地に赴き、とどめも自らの手で刺していらっしゃいます。また、周辺情報の確認も少々雑ですね。今頃、白雪姫は呪いを解いていつまでも幸せに暮らしているかもしれませんから…。
【王妃様の改善カルテ】
・部下との信頼関係を築こう
・大事な確認と検証は人任せにせず自分でやろう
・ステークホルダーの情報収集は基本
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