ディズニー データベース 別館

「ディズニー データベース」(https://w.atwiki.jp/wrtb/)の別館です。日本の誰か一人にでも響けばOKな記事を書いていきます。

ディズニー日本語吹替史〜ピノキオの謎編〜

2020年も早いものでもう一ヶ月が過ぎてしまいました。みなさんは有意義に過ごせてますか?誘惑に負けてはいませんか?

さて、2月3日は『三人の騎士』の全米公開75周年でしたね。

今年は5年単位で見るアニバーサリーが色々とありまして、新館のほうで年明けに流しましたのでよろしければご覧ください。なお、日付が書かれてないので不便なんですけどね!


さて、本日2月7日は『ピノキオ』公開80周年です。今回は『ピノキオ』の日本語吹替および封印されたバージョンについて簡単にご紹介しますね。

1958年の劇場公開時に初公開版が制作されました。1983年の再公開時には再公開版が制作、1986年にバンダイからLDが発売された際には旧版として全編新録、1995年にディズニー公式のビデオ化の際には、再公開版のうち子役(ピノキオ、ランピー、アレキサンダー)の声を録り直したバージョンが作られました。現在、ディズニーが公式で認めている吹替は1995年のソフト版のみです。

旧版は当時発売されたビデオ、ソフト版は現行市販されているDVDやブルーレイを購入すれば視聴可能です。となると、1958年初公開版と1983年再公開版は封印された音源ということになるのですが…。

f:id:disneydb23:20200205235457p:plain
2006年放送当時のNHK公式サイトより

実は、DlifeやNHK BSプレミアムでの放送時、公式サイトでは1983年再公開版(ピノキオ:初沢亜利)のキャストがクレジットされることがあるのです。これはディズニーファン…というより洋画の吹替マニアの間で話題になることもしばしば。直近だと、2016年2月24日にNHKBSプレミアムにて放送されました。

しかしながらこの放送回で実際に使われた音源はソフト版でした。残念。

これは、バージョン違いの吹替が存在する洋画番組では極稀にあるのですが、実際に放送されたバージョンと異なるバージョンのキャストが表記されてしまうという現象です。しかし、テレビ局側としては放送用素材と一緒に添付されていた情報をそのまま掲載して放送しているだけなので、間違えていても特に訂正をすることもありません。別バージョンが放送されてお詫びの記事を掲載するのは吹替を売りにする放送局(ザ・シネマなど)ぐらいです。

では、今回の「ピノキオ」に関して、なぜこのような間違いが起きてしまったのか。今回の件の原因はやはり「放送用素材のクレジット」に誤りがあったことなのですが、これが起きた原因は現行のソフト版の出自にあると思われます。ソフト版は、ディズニーが公式でビデオを出すにあたって、1983年再公開版(ピノキオ:初沢亜利)を使用しようとしたところ、ピノキオたちが不適切な言葉(時代に沿わない表現)を使っていたため、一部キャラクターの声のみ録り直すことにしたバージョンです。これは1995年に発売され(ピノキオ:辻治樹)、以降このバージョンのみがディズニーにとっての公式の吹替となりました。

しかし、ここで狂いが生じてしまったのです。1993年の金曜ロードショーで「ピノキオ」が放送された(らしい)のです。当時まだソフト版は存在していませんから、再公開版の音源が使われました。この時、再公開版の「ピノキオ:初沢亜利」という放送用クレジットが誕生したのです。同時期にWOWOWでも同音源が放送されたという噂もあるのでそれが原因の可能性も…?

そしてもうひとつ。ディズニーのビデオやDVDを見終わると、画面に吹替キャストが表記されるのですが、「ピノキオ」に関してはそのソフト用クレジットが存在しません。つまり、ピノキオ:辻治樹という事実はあるのですが、それを画面において表記する証拠が存在していないのです。そのため、今回のように辻版ピノキオが放送される時は、現存する誤った放送用クレジット(ピノキオ:初沢亜利)が使われることとなったのだと思われます。その例として、NHKに限らず、1999年WOWOWや2013年Dlifeにおいても、この初沢クレジットが誤用されています。

今後、ピノキオがTV放送される際、ピノキオ:初沢亜利とクレジットされることはあると思います。しかし、ディズニーが公式に封印したバージョンである以上、テレビで放送されることはまずないと考えて良いでしょう。


※ここまでは2016年2月25日に本館に掲載した記事を再構成したものです。


以下、追記です。
本館にこの記事を掲載した際、1983年再公開版で子役時代にピノキオの声を担当した初沢亜利さん(現在は写真家として活動されています)からコメントをいただいてしまいました。

その後初沢さんの投稿で、ソフト版の『もう糸はいらない』の動画を指して「これは自分の声です」とコメントしているのを拝見しました。こちらとしてはソフト版収録時にピノキオの声は全て録り直したものだと思っていたので、そりゃもう驚きです。確かにソフト版のピノキオ役の辻さんの声といえば、他に『メリー・ポピンズ』のマイケル・バンクスでしか聞いたことがないので断言する自信はないかな。というかマイケルってどんな声で喋ってたっけ…!今、我々の聞いているピノキオの声は誰なんだ…!正真正銘の初沢ピノキオの声を聴く方法は無いのか…!



あるんです、これが!


f:id:disneydb23:20200205235919p:plain
救世主、現る。


1983年頃にディズニー映画の公開に合わせてLPレコードで発売されたサウンドトラックで、おはなし編と題して物語も収録されています。『きつねと猟犬』や『ピーター・パン』も発売されました。これらは映画公開に併せての制作なのでもちろん映画と同キャスト。初沢さんのピノキオを確認することのできる(知る限り)唯一の市販の媒体となっています。金曜ロードショーの録画共々、お持ちの方は情報提供のほどお待ちしております!

ところで余談ですが、DVDのパッケージに入っている紙にキツネの声=山田康夫と漢字が誤記されているのが気になっていたんですが、このLPのクレジットが出自かもしれませんね。



f:id:disneydb23:20200206000847p:plain
おめでとう、ピノキオ。