ディズニー データベース 別館

「ディズニー データベース」(https://w.atwiki.jp/wrtb/)の別館です。日本の誰か一人にでも響けばOKな記事を書いていきます。

ディズニー vs 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響

皆様、いかがお過ごしでしょうか?

先行き見えないコロナ禍におかれましては、大変な気苦労をされている方もいらっしゃるかと思います。

8月5日、米ウォルト・ディズニー・カンパニーは2020年4~6月期の決算において約19年ぶりに赤字となったことが発表されました。映画やテーマパークも当初の予定どおりとはいかず業績が悪化した一方、昨年スタートしたストリーミング配信などのメディア事業や現在の情勢に合わせたコンテンツの公開が行われました。

業績悪化を受けて、元CEOのボブ・アイガー会長は給与を全額受け取りを控えることを発表しました(2019年の報酬はトータルで約4750万ドル(約52億円)だとか)。その他、役員の基本給も約20~30%カットされるとのことでした。

今回は昨今のコロナウイルスによるディズニーへの影響について簡潔に振り返っていきたいと思います。各種サービスを実際に利用される方は、公式ホームページ等にアクセスして最新情報をチェックしてくださいね。

  • 目次

テーマパーク

世界6箇所に拠点を構えるディズニーのテーマパークが次々と休園せざるを得ない状況となりました。休園のタイミングはパークによって異なりますが、6リゾートすべてが休園となったのは異例の事態でした。中でも、パリ(4月12日)、東京(4月15日)、アナハイム(7月17日)は休園状態で開園記念日を迎えることとなってしまいました。

現在も香港(二度目)、アナハイム、そしてハワイのオアフ島にあるアウラニ・ディズニー・リゾート&スパ・ コオリナ・ハワイが休止中です。


世界の主な施設の休止期間は以下の通りです。

香港ディズニーランド 香港 1月26日~6月18日、7月15日~
上海ディズニーランド 上海 1月26日~5月10日
イクスピアリ 東京 2月29日~5月31日
東京ディズニーランド/シー 東京 2月29日~6月30日
ディズニーランド・リゾート アナハイム 3月15日~
ディズニースプリングス フロリダ 3月15日~5月19日
マジック・キングダム フロリダ 3月15日~7月10日
アニマルキングダム フロリダ 3月15日~7月10日
エプコット フロリダ 3月15日~7月14日
ディズニー・ハリウッド・スタジオ フロリダ 3月15日~7月14日
ディズニーランド・パリ フロリダ 3月15日~7月14日

休園による影響

アナハイムとフロリダの両リゾートでのインターンシップを展開しているディズニー・カレッジ・プログラム、ディズニー・インターナショナル・プログラムも、リゾートと同時に休止が発表されました。7月には年内すべての期間で休止することも発表されています。

また、イギリスの視聴者参加番組『Ant & Dec's Saturday Night Takeaway』では2017年からシーズンの最終回を海外ロケで実施しており、2020年にはウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでの開催を予定していましたが、こちらもロケ中止となっています。

東京ディズニーリゾートの再開

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東京は7月1日から営業を再開

【画像出典】
【公式】東京ディズニーランド | 東京ディズニーランド


2月29日から営業を休止していた東京ディズニーランド東京ディズニーシーは、6月23日に7月1日からの営業再開を発表しました。本来、4月15日にオープンを予定していた『美女と野獣 "魔法のものがたり"』『ベイマックスのハッピーライド』などは延期しています。


チケットは完全予約制で、最初のチケット戦争は6月25日の15時から行われました。日程発表直後には受付時間対象外であるにも関わらずアクセスが集中し、予約サイトのサーバがダウンするほどの騒ぎとなりました。


7月1日からは営業が再開し、SNSでは園内でのソーシャルディスタンスや、四ヶ月間の休止期間に行われた改修内容などの報告が相次ぎました。

一般に興味をひいたのは前者のほうで、ネットユーザーからの「ホーンテッドマンションのキャストさんに『亡霊が間に並んでいるので、彼らの分を空けて並んでください』と言われた」という夢のある報告がバズろうものなら、ネットライターの皆さんはすかさず飛びつき記事にする、といったおなじみの光景が繰り広げられました。良いネタ、釣れたかな?

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釣り糸を垂らして待つネットニュースライターのみなさん

ディズニー・クルーズライン

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【画像出典】
ディズニー・クルーズライン|メンバーシップ|ディズニー・バケーション・クラブ|ディズニー


ディズニー・クルーズラインは2月3日の時点で、過去14日以内に中国本土に滞在していたゲストの乗船を禁止としました。この対象エリアは中国に留まらず徐々に追加され、2月29日には日本も含まれました。出航継続期間にはキャスタウェイ・ケイへの上陸が禁止されるなどの制約もありました。

3月14日の段階でCDC(米国疾病対策予防センター)の指示を受けて全船を停止し、5月の時点では7月27日までの新規出航を中止としました。影響を受けるゲストは全額返金および15ヶ月以内の出航で再予約可能な権利が保証されるそうです。最新情報では10月2日分までの新規出航中止がアナウンス済みです。

映画・テレビ

ディズニー/ピクサー

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新型コロナウイルス感染拡大防止のため、新作映画の公開延期や劇場公開中止といった影響が出ています。

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最初の犠牲者『2分の1の魔法』

【画像出典】
作品・吹き替えキャスト情報|2分の1の魔法|ディズニー公式


最初に影響を受けたのはピクサーの新作『2分の1の魔法』でした。アメリカでは3月6日に公開した後、二週間で公開を打ち切り、3月21日に有料配信を開始しました。4月3日にはスタッフの「より多くの人に新作を観てほしい」という声とともに、定額動画配信サービスのDisney+で配信が開始されました。

日本では公開延期を繰り返し、8月21日に公開が予定されています。タレント吹替なので、志尊淳さんと城田優さんが様々なバラエティ番組に宣伝のために出演していましたが、劇場公開が4ヶ月も延びたためか結構な期間色々なバラエティに出続けるという旨いんだか何なんだか不思議な現象が起きています。



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最大の犠牲者『ムーラン』

【画像出典】
ディズニー史上最強ヒロインを描くファンタジー・アドベンチャー!『ムーラン』4月17日(金)日本公開決定!《日本オリジナルポスター》解禁!|ニュース|ディズニー


中国へのマーケティングを強化していた『ムーラン』に関してはアメリカで3月末の公開が予定されていましたが、慎重に延期を重ねていった結果、8月5日に劇場公開中止が決定しました。代わりにDisney+で配信されることになりましたが、この作品は有料会員がさらに29.99ドルを支払うことで視聴可能となるレンタル扱いとなっています。日本のDisney+がリブランドする前のディズニーデラックス時代には約390円で外部の配信サービス同様に最新作を配信することはありましたが、完全新作を全世界向けに有料で展開するのは初めてのことです。『ムーラン』の売り上げに多大な期待を寄せていただけに自然な流れではありますが、今後こうした売り方が新たなスタンダードとなっていく可能性は否定できません。

日本のディズニー公式から『ムーラン』の続報は出ていませんが、米ディズニーが「Disney+の展開している国では同様に劇場公開しない」と発表していたり、日本語吹替情報サイト『ふきカエル』から吹替キャスト情報のページが削除されていることからも、日本での劇場公開は中止となる可能性が高そうです。

ふきカエルから削除されてしまったキャスト情報については、下記リンクからご確認ください。

w.atwiki.jp


主な延期作品は以下のとおりです。

変更前 変更後
ムーラン 2020年3月27日 2020年9月4日(Disney+)
The New Mutants 2020年4月3日 2020年8月28日
ソウルフル・ワールド 2020年6月19日 2020年11月19日
Bob's Burgers: The Movie 2020年7月17日 2021年4月9日
ジャングルクルーズ 2020年7月24日 2021年7月31日
Raya and the Last Dragon 2020年11月25日 2021年3月12日
Indiana Jones 5 2021年7月9日 2022年7月29日

上記以外にも、実写版『リトル・マーメイド』などのタイトルも制作を中断しています。


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また、ABCでは歌手やミュージカル俳優がそれぞれのリモート環境からディズニーの歌のパフォーマンスを披露する一時間の特別番組『みんなで歌おう!ディズニーソング』が放送されました。4月16日にパート1、5月10日にパート2が放送され、現在はDisney+で視聴可能となっています。

放送された楽曲は下記リンクからご確認ください。

みんなで歌おう!ディズニーソング パート1 - ディズニー データベース【8/7更新】 - アットウィキ
みんなで歌おう!ディズニーソング パート2 - ディズニー データベース【8/7更新】 - アットウィキ


マーベル作品

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昨年、『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』でフェイズ3を締めくくり、一段落していたマーベル・シネマティック・ユニバースもこのタイミングでシリーズ中断となっています。

昨年のD23 EXPO等で新作のリリース予定が発表されていましたが、現在は公開延期となっています。

5月に公開が予定されていた『ブラック・ウィドウ』も主な日本語吹替キャストが発表されはしましたが、11月に公開が延期されています。



変更前 変更後
ブラック・ウィドウ 2020年5月1日 2020年11月6日
The Eternals 2020年11月6日 2021年2月12日
Shang-Chi and the Legend of the Ten Rings 2021年2月12日 2021年5月7日
スパイダーマン(仮) - 2021年12月17日
Thor: Love and Thunder - 2022年2月11日
Doctor Strange in the Multiverse of Madness 2021年5月7日 2022年3月25日

Disney+で配信予定のドラマシリーズについても制作が中断となっています。

  • The Falcon and the Winter Soldier
  • Loki
  • WandaVision

スター・ウォーズ

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スター・ウォーズ』シリーズも2022年から隔年で新作3本の公開が予定されていましたが、現状一年ずつ遅らせての公開を予定しています。

変更前 変更後
公開予定作品1 2022年12月 2023年12月
公開予定作品2 2024年12月 2025年12月
公開予定作品3 2026年12月 2027年12月

また、今年8月27日から30日まで予定されていた「スター・ウォーズ セレブレーション アナハイム 2020」も開催中止となりました。次回は「スター・ウォーズ セレブレーション アナハイム 2022」が2022年8月18日~21日を予定しています。

インターネットコンテンツ

Disney+

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2019年11月12日にアメリカやカナダなどで開始した有料動画配信サービスのDisney+は、ステイホームの風潮とマッチして利用者をさらに伸ばしました。

インドでは2020年3月29日開始予定でしたが、3月11日に前倒しされました。日本も年内開始予定だったのが突然6月開始に前倒しされ、Disney+オリジナル作品以外にも『トイ・ストーリー4』『ライオン・キング』『アナと雪の女王2』も早くも定額配信となりました。

しれっと抜かされた『マレフィセント2』も本日(8/7)、配信がスタートしました。


アメリカのDisney+でもありがたいことに、前述の『2分の1の魔法』以外にもユーザー向けに様々な作品の配信を前倒ししています。

たとえば、6月26日に配信を予定していた『アナと雪の女王2』は3月15日という異例のスピード配信となりました。また、2021年に劇場公開するために7,500万ドルもかけたミュージカル『ハミルトン』の舞台映像も劇場公開を断念し、Disney+で公開しました。

前述の『ムーラン』以外にも、ケネス・ブラナー監督の『アルテミスと妖精の身代金』も公開予定を5月29日に延期した後、結局はDisney+行き(6月12日)となりました。日本では8月14日にDisney+で配信開始予定です。ほかにも『The One and Only Ivan』がDisney+行きとなっています。

前述のマーベルのオリジナルドラマ以外にも、リブート版『ホーム・アローン』なども制作を中断しています。

無料コンテンツ

世界中のディズニーグループのTwitterアカウントでは、#DisneyMagicMomentsというハッシュタグが展開されました。「世界中の子どもたちや家族に、おうちで過ごす時間をより楽しんでいただけるよう」、新作動画や休演中のパークの写真、チュロスをはじめとしたパークの食事の家庭用レシピ、印刷して遊べるペーパークラフトなど様々なコンテンツを紹介する企画です。

東京ディズニーリゾートのブログでもその一例が紹介されています。

www.tokyodisneyresort.jp


YouTubeではオラフを主人公にしたミニシリーズ『オラフとおうちじかん』(おうちでオラフといっしょ)が公開され、アニメーターやオラフ役のジョシュ・ギャッドらがリモートワークでアニメーションを作り上げたことが話題となりました。

最終回では、本家『アナと雪の女王』の楽曲を手掛けるロペス夫妻による新曲『僕たちは一緒』が披露されています。

www.youtube.com


ほかにもリモート収録でディズニーの絵本を海外のスターが読み聞かせる動画も人気を博しています。グーフィー役の声優ビル・ファーマーが自らグーフィーとマックスの物語、アリエル役のジョディ・ベンソンがリトル・マーメイド、C-3PO役のアンソニー・ダニエルズスター・ウォーズの物語を読んだりと、本人降臨系も多く存在します。


Storytime | #DisneyMagicMoments



日本でも、モアナの吹替を担当した屋比久知奈さんや、先代の歌のお兄さんの横山だいすけさんが『ストーリータイム・ウィズ』というタイトルで参戦しています。


ほかにも、ライフイズテック株式会社が中学生・高校生向けに展開するディズニーのプログラミング学習教材『テクノロジア魔法学校』を期間限定で一部を無料で提供していました。


劇場公演

3月にはブロードウェイとウエストエンドが閉鎖されたことで、ディズニー・シアトリカル・プロダクションズが手掛けるミュージカル作品も上演を中止することとなりました。『アナと雪の女王』は、『ライオンキング』や『アラジン』といった大ヒットミュージカルと比べると興行収入が落ち込んでおり、ブロードウェイ閉館前日の3月11日を最終公演とすることが発表されました。

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ブロードウェイ版『アナと雪の女王

【画像出典】
https://frozenthemusical.com/



日本でディズニーの舞台を上演している劇団四季も2月から公演をストップしており、随時再開していましたが、7月には『マンマ・ミーア!』の出演者がコロナに感染するなど苦境に立たされています。前述の『アナと雪の女王』も2021年6月に新規オープンするウォーターズ竹芝(東京都港区)の春劇場で日本初上陸する予定となっています。


ミュージカルの他にも『ブラバン・ディズニー!』や『ディカペラ』などの舞台公演も中止となっています。『Disney 声の王子様 Voice Stars Dream Live 2020』のように公演中止と同時に、特別番組の配信を決定したコンテンツもあります。

おわりに

この約半年でディズニーは様々なネガティブな影響を受けています。その状況下においても、配信スケジュールを前倒ししたりリモートワークによって新たなコンテンツを展開したりと、利益だけに固執しないエンターテイメントの展開を続けています。

新たな形態の作品を展開することでピンチをチャンスに変えようとする気概の企業は多々あると思いますが、ディズニーも例外ではないと思います。『ムーラン』の劇場公開中止に反発してフランスの映画館のオーナーが広報展示物を破壊する動画を公開するなど、穏やかでないニュースもまだまだ続きます。いつかこの状況を跳ね返せる日が来ることを心待ちにし、引き続き各々が「わたしにできること(The Next Right Thing)」に取り組んで乗り越えていきましょうね。