さて、11月12日にいよいよ『Disney+』がサービスを開始しました。
日本でも話題を集めつつ当日を迎えたわけですが、他の国に比べるとやはり盛り上がりに欠ける部分があったのではないでしょうか。
というわけで、今回はその波に100%乗り遅れた方々に贈る『Disney+』超初級入門となっております。
この記事は「情報収集をせずに気が付いたら『Disney+』が始まっていた」または「Disney+と吉野家の違いがイマイチよくわからない…」といった方を対象としています。サービス開始前からガッチリ調べていたり、VPNと日夜格闘している方は①辺りで混乱する恐れがありますのでご注意ください。
では早速、明日の朝礼のスピーチで使える10のポイントに沿って紹介していくのでお好きなところをマスターしてくださいませ。
目次
- ①『Disney+』は牛丼屋ではない。
- ②『Disney+』は動画配信サービスである。
- ③『ディズニーデラックス』とは別サービス。
- ④『Disney+』はアメリカから世界規模で展開。
- ⑤専用コンテンツも大量投入予定。
- ⑥『Disney+』は日本対応未定。
- ⑦日本語はほぼ未搭載。
- ⑧シンプソンズがほぼ全話配信される。
- ⑨スター・ウォーズ&アベンジャーズがまた改変される。
- ⑩ディズニー作品は既存マスターを使用。
- おわりに
①『Disney+』は牛丼屋ではない。
まずは、『Disney+』と吉野家の違いがイマイチよくわからない方々の疑問を解消していきます。
吉野家は牛丼屋のチェーンの名前です。一方、『Disney+』はディズニーの映像コンテンツを提供するサービスとなっています。あまり似ていません。
②『Disney+』は動画配信サービスである。
『Disney+』は、ディズニー社の所有する動画コンテンツを月額料金で見放題という動画配信サービスです。
ディズニーの所有する膨大なコンテンツが対象となっており、D23の事前発表記事によると、最初から対応しているのは映画500本とTVエピソード7,500本だそうです。
しかし、事前発表のなかった『The Mickey Mouse Club』(ディズニー版『天才てれびくん』的な番組。1955年放送。)がしれっと配信されているなど、発表済のリストがすべて網羅している訳でもないことが判明してきています。思わぬタイトルが隠れているかも…?
このサービスは今年の夏にアナハイムで行われたD23 Expoをはじめ宣伝が大々的に行われ、サービス開始前の予約者数はアメリカ国内だけで100万人を突破しました。その規模はやはり桁違いであったようで、実際にサービスが始まってみると、サーバー障害などのトラブルも起きていたようです。
③『ディズニーデラックス』とは別サービス。
日本では既に『ディズニーデラックス』というサービスが展開されています。
こちらは『Disney+』に先駆けて2019年3月からウォルト・ディズニー・ジャパンとNTTドコモの協業で展開しているサービスです。
最初は「コンテンツ数が少ない」「端末にダウンロードできない」「エラーが多発する」といった理由で散々使えない子扱いされていました。当時は『アベンジャーズ エンドゲーム』公開直前に無料お試し期間でほぼ全作予習ができるという点でたくさんのマーベル初心者の踏み台とされたサービスです。その後、無料期間中に解約するも、料金が発生して問い合わせる人多数なのもすっかりおなじみの光景に。
ただしサービスの内容が悪いわけではなく、毎週定期的にコンテンツが追加され、日本語の音声か字幕がしっかり搭載されています。未ソフト化のTVシリーズを視聴したい人にはうってつけのサービスとなっています。
さて、『ディズニーデラックス』ではディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズの4ブランドの作品が視聴できるようになっています。『Disney+』ではさらにナショナルジオグラフィックも加わった5ブランドからも選択できます。さらにカテゴリ分けがどうなってるのか全くわかりませんが、先日ディズニーが買収した20世紀フォックスの作品(『サウンド・オブ・ミュージック』や『ホーム・アローン』など)も視聴可能となっています。
ちなみに、『Disney+』では『ディズニーデラックス』の新作(有料)でしか出来なかったダウンロードができます。
④『Disney+』はアメリカから世界規模で展開。
2019年11月12日、アメリカ、カナダ、オランダの3ヶ国でサービスが開始しました。
アメリカでの料金はなんと月額6.99ドルという格安設定。年額66.99ドルというさらにお得な料金設定もあります。他にもディズニー傘下にあるHuluやESPN+とセットで月額12.99ドルというパックも用意されています。
翌週の11月19日にはオーストラリア、ニュージーランド、プエルトリコで開始予定。2020年3月31日にはイギリス、フランス、スペイン、イタリア、ドイツ、アイルランドでのサービス開始が予定されています。
⑤専用コンテンツも大量投入予定。
『ディズニーデラックス』でも日本の芸能人を起用したバラエティなどのオリジナル番組が用意されていましたが、『Disney+』ではディズニー直々に専用コンテンツがどんどん投入されていきます。
今回のサービス開始に合わせて配信が始まったローンチタイトルは実に12本。シリーズものは順次エピソードが公開されていくようです。その中の一例は以下の通り。
スター・ウォーズシリーズの最新ドラマシリーズ。『ジェダイの帰還』の5年後を舞台に、戦闘民族マンダロリアンの戦いを描く全8話のドラマシリーズです。
同名のアニメ映画『わんわん物語』の実写化作品。近年はアニメ映画の実写化ブームですが、劇場公開ではなく配信限定コンテンツとしてのお披露目は初。レディ達はCGでなく本物の犬が演じます。
『トイ・ストーリー4』でデビューした知りたがりのフォーキーが仲間たちに質問をしまくります。ローンチタイトルの第1話ではハムに「お金って何?」と訊ねます。
ディズニーのテーマパークで空想の世界を現実の形にするプロ集団「イマジニア」達の活躍に迫るドキュメンタリーシリーズ。当時のイマジニアの証言や貴重な映像が視聴できます。
⑥『Disney+』は日本対応未定。
さて、『Disney+』の規模感もわかったところでようやく本題です。
ここまで言っておいてアレですが、このサービスは日本への上陸予定がありません。
『Disney+』の詳細が判明した2019年4月が、3月の『ディズニーデラックス』開始直後であったこともあり、「ディズニーデラックスのせいでDisney+が上陸しないのではないか」と随分と目の敵にされました。というか、今もある種続いているといえば続いています。
その大きな理由は、マーベルやスター・ウォーズの最新シリーズが『Disney+』限定で配信されてしまうため。特に、今後のマーベル映画はこれらの限定シリーズとリンクすることが公言されているため、配信されないとなれば世界から出遅れてしまうファンもいっぱいいるわけです。これは『アベンジャーズ エンドゲーム』が各国で週間1位を総ナメにしている中、唯一『劇場版名探偵コナン 紺青の拳』を1位にしていた日本へのあてつけとしか思えません。(適当)
しかしローンチから2日ほど経っていることもあり、Android、iOSともに日本からの登録成功報告もちらほら出ております。また、ディズニーの人気が根強い日本ですから、将来的には対応するだろうという前向きな予想も多いようです。その根拠としてはこんな感じ。
(1)日本向けの公式サイトは一応日本語表記。
一部とはいえ日本語表記のサイトが用意されているのですから、全く視野にないはずはありません。
(2)専用コンテンツの日本語版が既に制作されている。
前述の『The Mandarorian』ですが、なんと日本語吹替版が既に視聴可能となっています。DVDなど別の媒体で発売されるかもしれませんが、だとしたら日本上陸よりも遥かに前のこのタイミングで各国版と同時に収録する必要性もないと言えます。
(3)既存サービスと統合のケースもある
イギリスでは2015年から『DisneyLife』という独自の配信サービスを展開していますが、将来的に『Disney+』との統合を発表しています。日本の『ディズニーデラックス』もインターフェースはよく似ていますから、『Disney+』との統合を視野に入れて開始した可能性は十分に有り得ると言えるでしょう。
ほか、2020年3月のヨーロッパと同時にアジア・パシフィックも上陸する説が出ているので、あわよくばそこに含まれているのではないかと期待する人もいます。
⑦日本語はほぼ未搭載。
『The Mandarorian』は新作ならではのケースで、その他の作品には日本語音声も字幕もまだ搭載されていないと見て良さそうです。(あったら教えてください)
対応言語も作品によってバラバラで、現在どの作品も基本的には英語とスペイン語は搭載されているようです。ものによってはフランス語やポルトガル語なども対応しているといった感じで、飛行機の映画ラインナップを見ているような感じが近いかもしれません。
近日配信予定の『イカボードとトード氏』や『リラクタント・ドラゴン』、先日希少音源が発掘された『ファン・アンド・ファンシー・フリー』などは検証する以前の問題であったようです。
⑧シンプソンズがほぼ全話配信される。
前述のとおり、20世紀フォックスの作品がラインナップされていますが、中でも目玉なのは初日から『ザ・シンプソンズ』の全30シーズンが配信されていること。マイケル・ジャクソンの回など一部対象外の作品もありますが、TV再放送などの他のメディアでも既にカットされることもある回のようで、ファンからしたら納得のいく状況らしいです。
そんなシンプソンズで初日にネットニュースになったのが、4:3のオリジナルサイズで制作された旧エピソードを16:9のレターボックスサイズにトリミングしていること。横長の画面に合わせるために縦横比を無理やり変更しているため、画面の上下部分がカットされ、いくつかのギャグが見切れてしまっているようです。かつてTV再放送の際にも同じ現象が起きてクレームが寄せられ、4:3サイズに戻すことで収まったそうですが、今回はその16:9の素材を流用してしまったのかもしれません。ディズニーは視聴者の声をもとに対応を検討するとコメントしています。
All the classic Simpsons episodes on Disney+ are in cropped widescreen format -- this means you miss out on tons of great visual jokes, like how Duff, Duff Lite and Duff Dry all come from the same tube. pic.twitter.com/cTy9adulFl
— Tristan Cooper (@TristanACooper) 2019年11月12日
⑨スター・ウォーズ&アベンジャーズがまた改変される。
『スター・ウォーズ』旧三部作の4Kマスターがなんと配信で初解禁です。
中でも話題になったのは『新たなる希望』の例のハン・ソロとグリードの撃ち合いシーンにまた変更が加わったとのこと。これはディズニーのルーカスフィルム買収前にルーカス自ら編集した変更点になるらしく、今回のタイミングが初出になったようです。また、旧三部作のFOXファンファーレが復活したとの報告も出ています。
『アベンジャーズ エンドゲーム』では、『新映像追加版』にも無かったトニー・スターク父娘のシーン(劇場公開時に撮影したがカットになった)が初解禁となっています。
先日、こちらの記事で「映画のバージョンが多いのは嬉しいこと。」と書きましたが、スター・ウォーズファンの前でこれを言っては「ノオオオオオ!」と言いながら奈落の底に投げ飛ばされてしまうかもしれないので迂闊な発言は命取りです。というわけで、今回のスター・ウォーズとアベンジャーズがそれぞれどのような改変となったか、是非その目で確かめてください。(機会はあるのか?!)
⑩ディズニー作品は既存マスターを使用。
映画の世界には長い歴史があり、その時代の世相を反映した表現が登場することがあります。ディズニーも例外ではなく、『スプラッシュ・マウンテン』の原作として知られる『南部の唄』は当時の白人と黒人の関係が適切に描かれていないとして人種団体から批判を受け、今なお自主規制の対象としてアメリカでは一度もビデオ化されたことがありません。そのため『南部の唄』は今回も配信されていません。
しかし今年の4月、『ダンボ』に登場するカラス達が黒人を揶揄しているシーンであることから『Disney+』では一部カットの対象となると報道されました。これは最近のディズニーらしい対応であり、同時期に公開された実写版『ダンボ』でもカラスにあたるキャラクターは登場しませんでした。
今回カラスのシーンを短縮してどのような編集になるのか想像も付きませんでしたが、蓋を開けてみると『ダンボ』は見慣れたオリジナル版そのままの配信(※本編終了後に注意書きあり)となりました。『ファンタジア』はBlu-ray同様、トリミング版の収録となります。
なお、『わんわん物語』に登場するシャム猫たちもアジア人のステレオタイプをもとに描かれていることから今回の実写版では対応がなされています。将来的に『ダンボ』のシーンカットが実現するとなれば、『わんわん物語』の彼女たちや『ジャングル・ブック』のキング・ルイも無事では済まされないのかもしれません。
また、最新マスターということで『トイ・ストーリー2』は今年の夏に4Kマスター向けに編集されたバージョンの収録となっています。NG集でプロスペクターがバービー人形たちに「次回作に出してあげるからね」と密会をするシーンです。1999年当時の製作者側の意図としては「映画界だからこんな光景もあるでしょ?」みたいなあるあるジョークの一環だったのかもしれませんが、時代の変遷に合わせて自主規制の対象となったようです。同作の監督がセクハラで退社したことを考えればもはや笑えませんね。
ちなみに、ディズニー映画に関して『ディズニーデラックス』では2018年11月公開の『シュガー・ラッシュ:オンライン』まで定額配信対象となっており、『Disney+』では2019年4月公開の『アベンジャーズ エンドゲーム』までが対象となっています。ここも本国ならではのスピード感と言えるでしょう。
おわりに
以上が、『Disney+』事情に完全に出遅れた方々に最初に押さえていただきたい10ポイントでした!日本語音声・字幕についてはほぼ未対応ということで、最新のコンテンツや日本未上陸の映画や番組を英語音声・字幕で楽しみたい方にはメリットがありますが、その他の方々にはおとなしく日本版を待つのが得策かもしれません。
それにまだまだラインナップや仕様に関しては明らかになっていない所も多いので、ここから興味を持った部分を調べるきっかけにしていただけたらなぁと思います。
ただ、このコンテンツ大量消費の時代、早くて安くて美味しいものを楽しめるという点では牛丼屋と通ずるところがあるんじゃないかと思ってみたりなんかしちゃったりして。(最後まで適当)